喫茶店、ラブ

 

わが家では3時になると母のお手製のおやつがよく登場した。

健康志向の母が忙しい仕事の合間にせっせと作ってくれたおやつの定番は

蒸しパンやヨーグルトのババロア、おやきといったヘルシーなもの。

どれもおいしくて、遊びにきていた友達にもとても好評だった。

しかし、たまにはよそいき顔のはなやかなおやつが恋しくなる。

 

親戚のおばさんに連れられて、近所の喫茶店にいくのが楽しみだった。

茶色くほの暗い店内のカウンターに座り、生クリームがちょこんとのった

コーヒーゼリーに添えられてきたガムシロップを慎重にかける。

大人たちの会話をそれとなく聞きつつ、小さなスプーンでひと口ずつ大切に味わった。

母が留守のときは、父が「内緒だぞ」と喫茶店のようなスナックのような不思議な

お店からチョコレートパフェの出前をとってくれた。

歩いても1分かからないくらいの距離なのに、なぜか出前だった。

細長いグラスにコーンフレーク、その上にバナナやアイスがこんもり盛り付けられて、

チョコレートシロップがかけられたうるわしい姿のパフェが届くとうっとり眺めた。

畳のうえのパフェ、それはもう夢のような出来事。うれしかったなぁ。

子供の私にとって喫茶店とは、日常にぱっとあらわれる特別な空間だったのだ。

 

旅先や散歩の途中、気になる喫茶店があるとふらりと立ち寄るようになった。

そのお店ごとにちがう雰囲気やメニューを見るといまだにワクワクする。

好きなとき、自由に喫茶店に行ける。あぁ大人って素晴らしい…。