海辺の缶ビール

 

佐渡の岩首に興味を持ったきっかけはパンフレットでみた棚田だった。

岩に首?なんだかこわそうな名前だけど、一度行って実際に見てみたい。

 

両津からバスで海沿いを走ること1時間。

集落の入口に食料品や雑貨を売るお店が2軒、小さな郵便局と階段の上にある神社、

廃校になった小学校を利用した談義所。ぱっと見たところ、あるのはそのくらいだ。

「何しにここに来たの?」と、一緒にバスを降りたおじいさんに聞かれた。

棚田を見るためにと伝えると、歩くのは大変だから車で案内してくれると言う。

農具のつまれた軽トラの荷台に乗り込み、ガタゴトと細くて急な山道をのぼる。

そうして、たどり着いた棚田は言葉にならないくらいきれいだった。

 

真夏の昼間、外を歩いている人はほとんどいない。

聞こえるのは波の音とトンビの鳴き声と、セミの大合唱だけ。

ちょっと休憩したくても食堂や喫茶店はない、あるのは圧倒的な山と海。

なんていうか、島の持っている本来の力強さをみせつけられている感じなのだ。

海辺を散歩していたらさっきのおじいさんがやってきて、手に持っていた

缶ビールを「ほれ」と1本くれた。じりじりとした陽射しから身を守るように

日陰をみつけて座り、冷えたビールを飲みながら東京で働いていたことや

、故郷の佐渡に戻ってきた理由、岩首のことなどポツポツと話してくれた。

飲み終わると「さぁ、今日の夕飯のおかずをとりに船をだすか」と帰っていった。

昔話みたい、とすっかり酔いがまわった私はおじいさんのうしろ姿を見送った。

 

完全に岩首にハマってしまった。何もないところがいい。

佐渡に行ったら、たびたび訪れる大好きな場所のひとつになった。

行く時には必ずおにぎりやパンを持っていくのを忘れずに。