月見るきみ想う

 

浅草にある「だっちゃ」に行ってきた。

佐渡の両津出身のお姉さんがちゃきちゃき切り盛りするお店。

春にしては暑かったこの日、カウンターに座りまずはノンアルコールビールでも

とメニューを探してものっていない。それもそのはず、店主は利き酒師で

佐渡の6つの蔵元から直送される地酒がつねに60銘柄以上そろっているのだ。

ノンアルコールなんて甘えたことを言ってる場合じゃなかったと反省。

 

海の幸やお肉など目移りしつつも、気になったのは卵かけごはん。

放し飼いのにわとりが産んだ卵、お米、そこにかけるお醤油まですべて佐渡産。

シンプル イズ ベストである。ほかにイカながもや「へんじんもっこ」のサラミ

など島ではおなじみの料理で、つかの間の旅気分を味わった。

 

せっかくだからと近くにある浅草寺にも立ち寄ることにした。

仲見世のお店はとっくに閉まっている時間、シャッターに描かれた三社祭の絵が

電球でほんのりと照らされていた。観光してる人もちらほらいる。

上京したてだろうか、初々しいスーツ姿のグループが楽しそうに歩いていた。

にぎやかな昼間とは違うしっとりした雰囲気の浅草寺、夜に来るのもいいな。

 

屋根のむこうにはライトアップされたスカイツリーもよく見える。

さっきまで佐渡気分を味わっていたけど、やっぱりここは東京なんだ。

見上げた夜空には黄身のような満月が浮かんでいた。

 

 

マスヤゲストハウス

 

どちらかと言えば人見知りである。

初対面の人と意気投合してみんなでワイワイ…したことあっただろうか?

これまでゲストハウスには数えるほどしか泊まったことがなかったけど

ある日、雑誌でマスヤゲストハウスをみてその姿に一目惚れ!

明治時代から続いた老舗旅館を、女性オーナーが買い取って改装したらしい。

宿泊してみたくて旅の予定もそこそこに長野県の下諏訪へと向かった。

 

インパクトのある赤い塀、重厚な門をくぐると、さっそくあらわれた縁側。

いつか縁側のある家に住んでひなたぼっこするのが私の夢。中庭の方とふたつある。

広いリビングの真ん中には20人くらいは座れそうなゆったりした大きなテーブル。

ペチカストーブがあり、赤レンガの煙突が吹き抜けになった2階まで続いている。

キッチンを囲むカウンターが夜はバーになって街の人と旅の人の交流の場になる。

 

せっかくゲストハウスに来たのだから、と勇気をだしてスタッフの方に話しかけ

下諏訪のことや、おすすめのお店を教えてもらった。

冬はー15℃まで気温が下がること、諏訪大社が四社もあるとは知らなかった。

いつの間にか共通の趣味の話題になって熱く語り合っていたのだった。

 

今はなんでもインターネットで検索できるけれど、やっぱりその土地のことは

住んでる人に聞くのが一番。地元への愛がじんわりと伝わってきた。

こうして時間を気にせずにゆっくりお話しできるのがゲストハウスのいい所だな

とあらためて思った。

 

観光マップには載っていないまぼろしのおいしいパン屋さんを教えてもらう。

週2日しか営業しないけれど、ラッキーなことに私が行った日は営業日だった。

しかも諏訪大社の近くで作られているなんて、なんだかご利益がありそう。

焼きたてのパンの匂いを漂わせつつ、東京に向かう中央本線に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイル巡礼

 

散歩中、ふと目にとまる古い建物にはタイルが使われていることが多い。

昭和に作られたとは思えないしゃれた色や形にうっとり見入ってしまう。

小さなタイルを組み合わせて、いろいろな模様をつくるモザイクタイル。

2016年6月、岐阜県笠原町にモザイクタイルミュージアムがオープン。

念願かなって、ようやく訪れることができた。

 

多治見市は「やきもの」の産地。

土岐川にかかる橋や、銀行の壁なども美しいタイルで装飾されていた。

町を歩けばいたるところにお宝タイルをみつけることができて楽しい。

 

ミュージアム前のバス停で降りると目の前に山のような不思議な建物が。

周りをふちどるように小さな木が植えられ、そよそよと風に揺られる姿は

ジブリの世界そのものだ。その外観に子供も大人も大興奮。

外壁はタイルの原料となる土でできていて思わず触って質感を確かめる。

 

外の光がはいる明るい空間には、昭和初期に使われていた流し台や浴槽、

東京の銭湯で使われていたタイル絵などが展示されて、きらめいていた。

めくるめく小さなタイルの世界にひきこまれる。これは夢?

 

建物の外に出て風にあたり、ようやく現実に戻ってきたようでひと息ついた。

さて、また多治見の商店街に戻ってタイルを探そうか。

 

 

 

 

 

 

桜よ、今年もありがとう

 

今年もお花見ができてホッとした。

ちょうど満開の予報のあたりで旅に出かけていたから、帰ったら見ごろが

終わってしまうのでは、とハラハラしていたのだ。

 

川を挟んで両側に咲いている桜を歩きながら見る、ささやかなお花見。

昔は桜の名所に行ったりもしたけれど、ここ何年かはずっとここだ。

川にはカモやコイが泳ぎ、白サギがじーっと魚を狙っている。

持参したお茶を飲みつつ、気がつくと何駅分か歩いている。

人もさほど多くないのでゆっくりと見れるお気に入りの場所。

 

桜を見ている人たちを見るのも好きだ。

朝の通勤時間、急いでいる足を止めて見上げたり写真を撮ったりしている。

なぜかちょっと切なく、また今年も桜を見れたことに感謝する。

1年の中でも桜の季節は特別だと思う。

 

 

カメラとわたし

 

私とNikon FM2の付き合いはもうすぐ20年になろうとしている。

フルマニュアルのカメラが欲しいなと思っていたときアルバイト先の

写真屋さんで基本を学ぶにはFM2がいいらしいと聞き、すぐ買いに行った。

 

同じNikonの f1.4の開放値のレンズをつけてファインダーをのぞいた時の

気持ちよさと、手になじむずっしりとした重さが大好きになった。

歩きなれたいつもの景色もFM2を通して見るとドラマチックに見えて

一緒に出かけると(さぁ、撮影するぞ!)というスイッチがはいる。

 

写真を撮ることは好きだけど、機械そのものにはあまり興味がないらしく

もっといいカメラが欲しいとか、中判が欲しいなどと思うこともなく

専門学校の授業用に買った50ミリレンズをつけていまだに撮影している。

 

何回かコンクリートの地面に落としたり、海で潮風に吹かれたりとハードな

使い方をしているからへこんだり、塗装がはがれたりもしているが

まだまだ撮影に付き合ってほしいと思う。お手入れをしながら

おばあちゃんをいたわるような気持ちで時々さすったりしている。