花束のゆくえ

 

私が子供のころ、女の子のなりたい職業ベスト10にケーキ屋さんなどと

並んでランキングされていた「お花屋さん」で働いたことがある。

 

母の日の短期バイトの募集があり、私と2人の女の子の3人が採用された。

町のお花屋さんにしては広めで、手ごろな値段で切り花や鉢植えが購入できる。

うっとりするような香りに包まれてかわいい花束を作ったりするんだろうな…

そんなイメージのままバイトに行った初日、それはそれはハードな仕事だった。

5月とはいえ水は冷たく、花の入った重いバケツを店内中あちこち移動させる

(腰にくる)、バラのトゲがささる(すんごく痛い)。

入荷したばかりの大量の枝には葉っぱがついたままで、とりのぞく作業をした

あとは爪の中まで緑色になって、洗っても数日間とれなかった。

お店にはバラを100本買っていく人、照れくさそうに小さいブーケを買う

男子学生。次々にいろんな人がやって来てうれしそうにお花を選んでいる。

あの花束は誰のところにいくんだろう、とつい想像してみる。

 

お祭りのような忙しさだった母の日の営業を終えて、閉店後に掃除をしている

と作業台でベテランスタッフの人がまだ何かをせっせと作っていた。

こんな遅くまで大変だ、とチラッと見るとその顔はなんだかにこにこしている。

短期バイトはこの日で終わり。お店にはしんみりとしたムードがただよっていた。

10日間くらいだったけど、やっぱりお別れはせつない。

お世話になりました、とひと言ずつあいさつしているところに花束が登場した。

3人それぞれに合わせたお花でつくられていて、私がもらったのは赤いガーベラ

と、ピンクのアルストロメリアがかわいらしく束ねられていた。

さっき作っていたのはこれだったんだ!

先輩たちからのお疲れさま、ありがとうの気持ちがそこにこもっていて、

疲れてよれよれだった私は、サプライズプレゼントに思わず泣きそうになった。

花束を持って電車に乗るのはうれしくもなんだか恥ずかしくて、そーっと何度も

眺めながら大切に抱えて帰り、すぐに家にあったガラスのコップに挿した。

 

花束をもらうことが、こんなにうれしいなんて今まで知らなかった。

いろいろな気持ちを伝えることができる、花束の効果はすごいなぁと思った。