父とニューヨーク

 

何年か前にアメリカに住んでいる姉を訪ねて、父と旅をした。

 

海外にほとんど行ったことがない父、私も姉のところへ行くのはこれが2回目。

迷わないようしっかりエスコートしなくては、と責任が肩にのしかかる。

それにくわえて初めての2人旅、とにかく父も私もかなり緊張していた。

 

長時間の飛行機、通路をはさんで隣に座っている父をちらっと見るとめずらしく

本なんて読んだりしている。機内で読もうとわざわざ家から持参したらしい。

何回見ても寝ている様子はなく、2人とも一睡もしないままニューヨークに到着した。

空港で出迎えてくれた姉を見つけてかけ寄ると手に「takagi」と書いた小さな紙を

持っていて思わず吹きだした。笑ったのとホッとしたのとで泣きそうになるのを

必死でこらえる。とりあえず無事にアメリカに着いたのだ。

 

タイムズスクエアのカフェで顔の大きさほどある本場のニューヨークチーズケーキを

食べたり、ロックフェラーセンターの70階にある展望台からオレンジ色にきらめく

マンハッタンの夜景をみた。目の前に広がる夢のような景色にうっとりする。

翌日は自由の女神を間近で見ようと、行列に2時間ほど並んで船でリバティ島へ渡った。

「意外に小さいね!」自由の女神の足元ではしゃぐ姉と私をよそに、父は淡々と

観光をこなしている。楽しんでいるのかなぁ…だんだん心配になってくる。

 

ひと休みしようと行ったセントラルパークは、広々とした公園にたっぷりと樹が植えられ

緑のトンネルのようになっていて、葉っぱの間からさしこむ太陽の光が気持ちいい。

さっきまでいた街とは対照的なゆるやかな空気にリラックスして、思いっきり伸びをした。

ベンチに腰掛けていると、かわいらしいリスがタタタっと目の前を横切った。

あちこちに野生のリスがたくさんいる。動物が大好きな父のテンションはみるみる上がり

デジカメを取り出すと、レンズをめいっぱいズームにして夢中で写真を撮っていた。

 

帰国してアメリカで撮ってきた写真を見ながら「また行きたい」と言っている。

結局、この旅で父が1番よろこんでいたのはリスをみた時だったのだ。

それなら日本でもいいんじゃないか?と心の中でつっこむ。

 

 

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