- 2021.12.10 Friday
ハレの日には
いくつか写真関係の仕事をしたうちのひとつに、まちの写真館での
アルバイトがある。その当時はフィルムカメラで撮影していたので、
スタジオアシスタントだった私の主な仕事は中判カメラ用にフィルムを
詰めたり、ライトを動かして調整したり、着物がきれいに写るように
整えたりすることだった。
七五三や成人式、お見合い写真やプロフィール用の写真などスタジオでは
毎日さまざまな撮影が行われていた。
ウエディングドレス姿の花嫁さんにうっとり見惚れたり、成人式を迎えた
若者たちの初々しく、輝きに満ちたまなざしの美しさにハッとした。
七五三で慣れない着物をきた小さな子供たちがまっすぐ立てずに、千歳飴を
持ってゆらゆらと揺れている様子は、最高にかわいい。
ぐずって泣いている子供がいれば、カメラマンはスタジオに常備されている
ぬいぐるみをわしっとつかみ、全身全霊で笑わせようとする。
きっと何度も見返されるであろう記念写真。すべてはいい表情を引き出すため。
そのプロ根性をみるたびに、わが上司ほんとすごいな…と尊敬する。
なかでも、私がとくに好きだったのは家族写真だ。
みんなでおめかしして多い時にはおじいちゃん、おばあちゃんなど三世代
でわいわいとご来店されることもあった。
バランスが良くなるように並びを決めて、カメラマンがポーズをつける。
さぁ、奥さまの肩に手を置いてとか、もっと寄り添ってとか、腕を組んでとか
つぎつぎに出される指示に「恥ずかしい〜」「こんな姿勢したことない!」
と大盛り上がりなのだ。見ているこちらまで楽しくなってニコニコになる。
いろんな人たちの人生の大切な節目に立ち合わせてもらい、幸せや感動を
おすそ分けしてもらっているような仕事だな。
そんなふうに賑やかに撮影された写真は、ポーズもライティングもピシッと
決まっていて毎回すばらしい仕上がりなのだった。
ケータイ電話についているカメラの画質もよくなって手軽にキレイな写真が撮れる
この時代。わざわざ写真館に行くのはちょっと手間だし、緊張もするだろうけど、
たまにはこんなイベントがあってもいいんじゃないか。
撮影しているときはもちろん、家で準備をしている時間も、行き帰りの道も
交わした会話も含めて、まるっと思い出の一部になるのだと思う。