浅草マンボ

 

写真の専門学校にはいって最初にでた課題がたしか「三社祭」だった。

毎年5月に浅草で3日間かけて行われる、それは有名なお祭りだ。

 

50ミリのレンズ一本で全体の風景、御神輿を担いでいる人の上半身

のポートレート、お祭りらしさを撮影する、そんな内容だったと思う。

買って間もないNikon FM2にモノクロフィルムをつめて、いざ初めて

の三社祭へ。一緒に行ったクラスメイトたちとひととおり屋台を見て

まわってから別行動になり、それぞれ撮影を開始した。

ハッピを着ている犬、はしゃぐ子供たち、着物姿の渋くてかっこいい

おじいさん。思わず笑顔になるような場面にたくさん出会った。

さて、問題はポートレートだ。

 

単焦点のレンズはズームができないからアップで撮るにはかなり近くに

寄らないと撮れない。被写体には自らの足で近づくんだ!とのことらしい。

お祭りに慣れていない私は人の多さと熱気に圧倒されるばかりで、

御神輿に近づけない。これじゃあ、担いでいる人が豆つぶくらいだ。

なんで望遠レンズじゃダメなんだ…と先生をうらむ。 

結局この日、ポートレートはほとんど撮れなかった。

 

次の日も朝早くから浅草へ向かった。

今日こそ撮らなければ課題が提出できない、へっぴり腰で遠くから見物して

る場合じゃない!といやでも気合がはいる。

意を決してぐいぐいと人をかき分けて御神輿に近づくと、担いでいる人たち

のいきいきとした表情が目に入ってきた。かっこいいな〜!

見ているこちら側にも、興奮と楽しさが伝わってきて一体感がうまれる。

気がつくと人にもまれながらすごい至近距離で撮っていた。

 

それ以来、自分のなかに眠っていたお祭り魂に火がついたのか課題でも

ないのに三社祭に行き、夏の浅草サンバカーニバル、高円寺の阿波踊り、

下町の盆踊りにまで通うほど「お祭り」的なものにハマったのだった。

 

 

 

 

都会の絵の具

 

原宿へと続くゆるやかな坂の両側に、ケヤキの樹がのびのびと葉を広げて

いてなんだか公園みたい。歩いている人のスピードもゆっくりに感じる。

高級ブランドのお店が立ちならび、華やかなショーウインドを見ていると、

人形のように立っているドアマンと目が合ってびっくりした。

 

ここ何年か表参道にある美容院に通っている。

今までにないくらいおしゃれな髪形になっちゃうかも〜!と淡い期待を

抱いてイスに座る。ブローをしてもらい仕上がりを確認すると、鏡の中に

いるのはいつもとあまり変わらない自分なのだけど「表参道」ということが

気分的に重要な気がして、はりきって通っている。

 

最近のお気に入りスポットが表参道ヒルズのすぐ隣にある新潟館ネスパスだ。

その名のとうり新潟や佐渡の特産品が売っていて2階には観光センターもあり、

旅の相談もできる。佐渡に行くようになってから新潟がぐっと身近になった。

佐渡バターや、わかめ、都会の真ん中で見慣れたものに囲まれてほっとする。

これこれと、店内の中央につまれているワダコメのかりんとを買う。

佐渡で作られている素朴なかりんとうで、パッケージに書かれている

「かたいです」という言葉を裏切らないそのかたさに、ハマってしまった。

 

いつ行っても混んでいて、ここに来ている人は新潟出身なのか、それとも

私と同じ新潟ファンなのか不思議だ。心の中で木綿のハンカチーフが流れる。

 

築地ブギウギ

 

海外にでも来たのかと思うほど、築地はいろんな国籍の人であふれていた。

海鮮丼や玉子焼きに行列し、元気に朝ラーメンする人たち。呼びこみをする

店員さんも必死だ。もはやテーマパークのようなにぎやかさの場外を人を

かき分けてずんずん進む。今日の目的は築地市場の場内にある。

 

場内にはいると小さな荷台のついた一人用の黄色の乗り物が走り回っていた。

これ、ターレーというそうで観光客がいてもおかまいなし、けっこうなスピード

をだして荷物を運んでいる。それがものすごくかっこいい。あ、女の人もいる!

沼田学さんの「築地魚河岸ブルース」という写真集はひたすらターレーに乗った

人のポートレートで、いかついおじさんや、お兄さんたちが渋すぎる。

私の師匠のカメラマンМさんも、築地で働く人を作品として白黒で撮影していた。

これはたしかに撮りたくなると、撮影に夢中になっているとひかれそうになる。

本気の市場、活気があってこれぞ築地という感じ、みなさんいい顔をしている。

魚をさばいてるおじさんのまわりには、エサを求めてカモメが群がっていた。

 

そして目的の珈琲の店「愛養」へ。

クウネルで見てからずっと行ってみたかったあこがれのお店の前に立ち

(ほんとにあったんだ…)と感動してしまった。名物のトーストを注文したら

「今日は予想以上にお客さんがきて、パンがなくなったから買いに行ってるの、

お待たせしてごめんなさいね〜」とお姉さん。「ぜんぜん急ぎません」

ゆっくりできてむしろうれしい。混雑していた店内もいくぶん空いてきた。

置いてある新聞を読んだり、ラジオから流れる人生相談をききながら待っていると

店長の鈴木さんが食パンを抱えて戻ってきた。この道50年の華麗な手さばきで

次々に焼き上がりお客さんのもとに運ばれるトースト、コーヒーはコーヒーアン

という保温器からアツアツが注がれる。カウンターから眺める、しあわせな時間。

 

食べ終わるとサービスの緑茶と、ご自由にどうぞとチョコレートがでてきた。

築地で働く人だけじゃなく、いちげんさんの観光客もやさしく受け入れてくれる

懐の深さ。長い間あこがれ続けたお店は、大好きなお店になった。

代官山で逢いましょう

 

上京したてのころ、代官山は憧れの場所だった。

東京を満喫しようと雑誌オリーブにのっていたお店をハシゴした。

ハリウッドランチマーケットをのぞいて(店の横でアヒルが飼われていた)

ヒルサイドパントリーで天然酵母のクロワッサンを買って、めずらしい

輸入食品をみる。ワッフルズビウラはいつも迷ってたどり着けなかった。

パティシエになりたかった時で、コルドンブルーの授業体験も行った。

たしかパリブレストを作ったと思う。シュー生地をドーナツみたいに焼いて

間にプラリネ入りのカスタードクリームを挟んだ。付き添いで一緒に来てくれた

姉を頼りまくっていたっけ。結局、お菓子の道には進まなかったけれど。

 

最近では、もっぱら音楽を聴きに行く場所になった。

よく行くライブハウスが3軒あってそれぞれ雰囲気がちがうからおもしろい。

ライブが終わったら混みあう東横線には乗らず、渋谷まで歩いて帰ろう。

夜の風に吹かれながら、余韻にひたるにはちょうどいい距離。

歩くテンポとさっきまで聴いていた音楽が体のなかで重なる。

 

月見るきみ想う

 

浅草にある「だっちゃ」に行ってきた。

佐渡の両津出身のお姉さんがちゃきちゃき切り盛りするお店。

春にしては暑かったこの日、カウンターに座りまずはノンアルコールビールでも

とメニューを探してものっていない。それもそのはず、店主は利き酒師で

佐渡の6つの蔵元から直送される地酒がつねに60銘柄以上そろっているのだ。

ノンアルコールなんて甘えたことを言ってる場合じゃなかったと反省。

 

海の幸やお肉など目移りしつつも、気になったのは卵かけごはん。

放し飼いのにわとりが産んだ卵、お米、そこにかけるお醤油まですべて佐渡産。

シンプル イズ ベストである。ほかにイカながもや「へんじんもっこ」のサラミ

など島ではおなじみの料理で、つかの間の旅気分を味わった。

 

せっかくだからと近くにある浅草寺にも立ち寄ることにした。

仲見世のお店はとっくに閉まっている時間、シャッターに描かれた三社祭の絵が

電球でほんのりと照らされていた。観光してる人もちらほらいる。

上京したてだろうか、初々しいスーツ姿のグループが楽しそうに歩いていた。

にぎやかな昼間とは違うしっとりした雰囲気の浅草寺、夜に来るのもいいな。

 

屋根のむこうにはライトアップされたスカイツリーもよく見える。

さっきまで佐渡気分を味わっていたけど、やっぱりここは東京なんだ。

見上げた夜空には黄身のような満月が浮かんでいた。

 

 

同じ名前の神社

 

暇さえあれば部屋で電車の路線図を広げて、今度はどこへ行こうかなぁとか

この駅おもしろそうなどと考えています。

「押上」という駅名にひかれて、周辺を調べてみたら同じ名前の神社が

あることがわかり(これはぜひ行かねば!)とはじめて訪れて以来

とても気に入って、たびたび行くようになった高木神社。

 

先日、少し遅くなってしまったけど新年のごあいさつに行ってきました。

押上駅から昔ながらの建物とスカイツリーを眺めつつ歩くこと7分ほど。

細い路地を入るとこぢんまりとした神社が。

同じ名前ゆえ親近感がわいて「ただいま!」と、つい言いたくなる。

境内に入るとホッとするのです…不思議。

 

「人と人の縁をむすぶ」「仕事の交渉、相談事の縁をむすぶ」などむすびの

御神徳があるそうで、御朱印やスタンプはおむすびのモチーフ。

色紙に押してもらい、大切にカバンにしまう。お財布の御守りも購入。

 

さて、次はどこに行こう?

近くに長野県出身のご夫婦がやっている純喫茶がある。

内装がステキで、生ジュースとパンがおいしいお店もいいな。

そうだ、そのあとは隅田川を渡って浅草に出よう。

 

そんなことを考えつつ、うきうきと神社をあとにするのでした。

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