ロック師匠

 

実を言うと、押しかけアシスタントをさせてもらったのは1回だけじゃない。

 

写真の専門学校時代にライブカメラマンを目指していた。

大好きな音楽に身をゆだねながらシャッターを押すなんて最高じゃないか。

自由課題のテーマを「ライブ」にして、都内のライブハウスに通っては撮影

する日々。イベントで演奏してるのは知らないバンドばかりだったけど、

小さなライブハウスにはいろんな人の夢が詰まっているようで楽しかった。

 

当時、愛読していた音楽雑誌に尊敬してやまないライブカメラマンの人がいた。

構図とかピントがどうこうとかを越えた写真で、お客さんの興奮やその場の

空気感が写っていて、ぱっとひと目見ただけでその人が撮ったとわかる。

音が聴こえてくるようなライブ写真で、かっこいいなぁ〜としびれてしまう。

どうにか弟子にしてもらえないだろうか…考えに考えたすえアシスタントの

募集もしていないのに出版社に電話をかけたのだった。

若いってなんて怖いもの知らずなんだろう、勢いだけがすべての20代前半。

 

一度会ってもらえることになり、渋谷のカフェでブックを見てもらった。

憧れのカメラマンに写真をみてもらえることに緊張しまくりの私。

「う〜ん…いいんじゃない?」持参したライブ写真にはほぼノーコメントで、

憧れのカメラマンは目の前でおいしそうにフルーツパフェを頬張っている。

普段アシスタントは必要ないけど、ちょうど夏フェスシーズンで人手がいる

ということで、間近にせまったフジロックに同行させてもらえることになった!

人生に運というものがあるならばすべて使い果たしたな、と思うほどの幸運だ。

 

フジロックは、新潟の雄大な山の中にいくつかのステージをつくって行われる

日本を代表する音楽フェスで、海外からも有名なミュージシャンがたくさん来る。

私のメインの仕事は、入り口から離れた場所にあるステージまで機材を運ぶこと。

山道を予備のカメラ、レンズ、フィルムなどが入ったずっしりと重いバックを

師匠のあとについて一緒に運んだ。楽しそうにはしゃぐ人たちとすれ違う。

ステージ前に到着すると、日焼けしたガテン系の男性カメラマンが何人かいた。

日頃の運動不足がたたってか、機材を背負って歩いただけでへろへろな自分が

今からこの場所に挑戦するのは無理なんじゃ…と初日で心が折れてしまった。

 

ライブがはじまると特に手伝えることがなくて「見てていいよ」という師匠の

優しい言葉に甘えて、お客さんに交じって音楽をめいっぱい堪能した夏の3日間。

ステージ前でロックに撮影する師匠の姿を、遠くから見ていた。かっこよかった。

これが人生で初めてのアシスタント。若かったとはいえ、いま思えば世間知らず

で失礼なことばかりだったと恥ずかしくなる。

きっと、役にたたないひよっこアシスタントだったに違いない。

でも、ここには書ききれないほど楽しくて忘れられない貴重な経験だった。

 

憧れのフジロックに連れていってくれた師匠に感謝です。